3分間だけウルトラな父になる

独身アラサー男、料理終わりのキッチンで決意を固める。

そうだ、ビッグダディになろう。

なに、婚活宣言ではない。そりゃ独身アラサー童貞男だって、彼女ができたら料理を振舞いたいなぁとか、エプロン姿の彼女と二人いちゃいちゃしながら餃子でも一緒に包みたいなぁでも二人の愛は包みきれないなぁとか、キッチンまわりの妄想フルコースは持ってるけども、こうなりゃ目指せ童貞ミシュランの勢いだけども。でも僕は結婚願望こそあれど、子供の願望は今のところない。

が!今だけはビッグダディになるのだ。ウルトラの父、ピンチのときの変身だ。めんどうなことでもビッグダディの豪快な心意気と愛があればやり遂げられる作戦!という名の願望。

というわけで、よーしよし集まれ子どもたちー!。包丁まな板フライパン、軽量スプーンも菜ばしも、我が愛しの息子たちよ。あ、こらっ先につまみぐいするなよピーラー。今日は一緒に料理手伝ってくれてありがとな。いい汗かいたしみんなでお風呂入ろうじゃないか。一番ちっちゃい子からこっちおいで、パパが背中流しちゃうぜ、ごしごし。頭も洗っちゃうぜ、わしゃわしゃ。

そう凡庸は百も承知、僕の息子たちとは料理終わりの洗い物くんたちだ。いやはやこの試み・・・小さじ1杯分かなぁ新鮮味としては。

なんだよ微妙じゃんて?そんなもんだ。あれだね、ちょっとでも工夫して楽しもうとする心豊かな俺!っていう誇らしさに浸れるのがいいね。自己愛ことこと煮立ってるわ。

それに、もし自分が調理器具に転生したとして、我が身を使って切ったり炒めたりして汗まみれ泥まみれになったら、身体洗い流してさっぱりしたいよなーと思うと、こやつらが少しだけかわいく思えてくる。まさに味変、意味のスパイス。

普段はぼんやりとしか見てない洗う手元も見てる。やっぱりちょっとだけ違う。よくよく考えるとみんなちっちゃいんだなあなんて思いながら、いつもはスポンジでぐしゃぐしゃ雑こすりだけど、今だけはくいくい。

あ、でも女性に対してそんな態度だとモテないからな息子たちよ。え?パパ?パパはほら、そもそも現実の会話だとこんなキャラじゃないから。自分の語れるものが少ないって分かってるから、会話の出だしからかしこまって誠実奥手キャラぶって、緊張してるからうまくしゃべれないんだって思われたがろうとする、そーゆう予防線張るタイプだから。え?なんかパパ急にこわいって?僕はね、君たちの本当のパパじゃないんだよ。うんひどいもうやめよう。

だいいち、スパイスも毎度かけてれば慣れてもくるし、飽きてくる。だからやっぱり気休め。めんどいもんはめんどい、それも自然、それも心。だからこれはたまの冒険、何か得られりゃ儲けもの、得られなくても料理はうまい。めんどうさも一口目の達成感ボーナスとして活きてると時々思い出して生きていくか。

ん、待てよ?次は洗い物「くん」でなく「ちゃん」にして、みんなブルアカの好きな女の子キャラだと思って洗えば・・・えっアロナほほ、ほんとにいいの?うおおおおえあぁああああああああ。

こんな童貞。間違えた道程。童貞ミシュラン一つ星目指すか。よこしまな心も洗い流そう、いややっぱヤダ。