家族的な瞬間

今週のお題「大移動」

 

子供の頃、毎年夏休みになると長野のおばあちゃんちに家族で帰省していた。

うちの家は倹約的であまり家族旅行もしない家庭だったので、夏休みが近づいてきたら「今年はいつ長野行くの」と待ちきれず母親に聞いていた記憶がある。

神奈川の実家からおばあちゃんちまでは、休憩含めて車で5時間くらい。

その大移動は小さな特別の詰め合わせで、こういう時だけ車内で流すCD(レミオロメンさんのスタンドバイミーは疾走感が最高だった)、後ろの席の母親からもらうゆかりおにぎり、大きなサービスエリアを歩くわくわく感と心細さ、カーナビに表示された次の地点まであと何キロから感じる”ここまで来た感”、すべてが旅の高揚だった。

後部座席の弟や母親が寝ているのを見ると、なんだかほっとして。隣で運転する父親のことは、よくずっと起きて運転してられるなあと得体の知れないタフさが頼もしくて、でも年を重ねるたびに不安になって。父が眠気にやられないよう、飴やガムを渡すのが大事な使命だった。

 

今考えると、家族で車に何時間も乗るって結構特殊な状況だったのかもしれない。家でもあんな狭い空間にあの近さでずっと一緒にはいない。宇宙船で過ごすのと少し似てるのかな。あれも貴重な家族的な時間だったんだと、家族とますます出かけなくなった今思う。