卒業式の日の冒険

今週のお題「ほろ苦い思い出」

 

今でも思い出せる、あのむんむんと甘く強烈なラベンダーの香り。

中学1年のとき、3年生の卒業式にその香りあふれるワックスをつけていき、教師にバレて体育館から強制退場させられた。

かねてから同級生たちがワックスをつけてるのを見て憧れ、バレたその日が初めてワックスをつけて登校した日だった。意気揚々と鏡の前で時間をかけセットした、素がさらさらストレートなのに今日だけぐいんぐいんうねってる髪。

部活の顧問で担任でもある先生に体育館の壁際に連れていかれ、「なんでつけた」と問い詰められる。「いや、寝癖がひどくて」と粗大ごみレベルの言い訳をしたことで胸ぐらをつかまれ本気で怒られる。あえなく式の前に退場。

髪を洗いに行った先では学年の副主任から「ばかだねえ~」と呆れられた。ああその言葉胸にしみる。

その後、タオルで拭いても湿ったままの髪で再度体育館に戻るが、パイプ椅子に座った僕に突き刺さる周囲の視線。下を向いて涙目になる。「匂いすごかったぞ」と言ってくる部活の同期はワックスをつけていた。なぜ自分だけがと悔しくなる。そういう問題じゃない。

その日以来、ラベンダーのワックスを使うことはなかった。今この場を借りてワックスくんに謝罪したい。君は悪くないよ、全部僕が愚かだった。

ミスしたとき言い訳でごまかすのはやめようと身に刻まれた思い出。