演技経験ゼロの僕が演劇ワークショップで痛々しく無双してきた件

演技に必要であろう資質を軒並み欠いた僕は、しかし嬉々としてその場に乗り込んだ。 きっと得意ではないけれど、欲しいものがあまりにもそこに詰まっていたから。 先週参加してきた、1日体験型の演劇ワークショップ。2時間のなかで簡単なゲームや台本読み…

東京の銀河に浮かんできた

景色を映す瞳は今、丸い銀河のビー玉だ。 空を覆う淡く黒い天幕に、子供が白銀色の砂糖を余すことなくふりまいたような無数の輝き。東京の片隅で、僕は満天の星を浴びている。どこまでも広がる光点の大河は、首をこれ以上反らせないほど天を仰いでも視界に収…

日々は短し歩けよ死神

死神の吐息が、頭の中を包んでいる。両のこめかみに充満する、麻酔液が気化したようなぬるぅと鈍い感覚。まとわりついて離れない、いやなけだるさ。清浄だったはずの思考は、鮮明だったはずの世界は、とろんとした膜に覆われてぼやけてしまっている。思考は…

出会い系サイトの業者に恋をした

こんなんもう恋だろ。 出会えないと分かった彼女、いやかの“女”かすら怪しい存在へ送るメッセージを打ち込みながら、僕は自分に言い聞かせる。胸の中の動揺を振り切るように力強く、しかし確かな熱がこみあげてくるのを感じながら。 彼女を見つけたとき、僕…

「面白いもの」が怖いという生き方

面白い漫画を読むことができない。正確には、漫画に限らず小説、アニメ、映画、動画含め、面白い作品というものが見れない。YouTubeで、AmazonPrimeで、面白そうだなと思う作品を見つけても、再生ボタンを押すのをためらってしまう。見てみたいけど見るのが…

いざ、6年ぶりのフリータイム

"オール"、それは親密度ランクの初期に発生する確変イベント。「まあ数時間なら話してもいいか」から「まあ一晩過ごしてもいいか」へ関係性が深まった結果にして証。『誰かと過ごす深夜0時以降』という、親友欲しい勢にとってのまばゆく分厚い鉄の扉が開く瞬…

2度目のレジで会えたら

会計を終えてスーパーを出た直後、僕は後悔にとらわれていた。それは、はたから見ればとるに足らないものなんだと思う。でも自分にとっては忌み嫌う悪癖が出た格好で、そういう場合どんなに小さくても、看過も軽視もできないタチだった。 「なんであそこでも…

料理の悪魔と契約した

料理を作るのが好きだ。手間がかかるし面倒だと思うときもあるけど、好きだ。 じゃがいもの皮をむき終えた後の、原石をカットして薄黄色の宝石を取り出したような姿。 にんじん玉ねぎを切るときの、無心でリズムに乗る手元。まな板と包丁が鳴らすたんたんた…

利己心の限度はどこにある(『夏目漱石 こころ』)

人物評 先生 「人間らしさ」の体現者にして犠牲者。「俺は策略で勝っても人間としては負けたのだ」と自らの行いを恥じたが、それは先生のほうが精神的に複雑だった(人間らしかった)がゆえに起きたこと。やり方は灰色だったがお嬢さんへの愛情は後年にわた…

あなたの知らない「軍港めぐり」の世界(体験レポ#1)

船の中。窓に額を寄せるようにして、海の向こうに浮かぶ”それ”を見ている。ネットでしか見たことも聞いたこともなかった名前。遠目にも分かる巨体。青い波の鮮やかさ柔らかさと対照的な、どこまでも灰色で堅殻なフォルム。 ガイドさんの意気揚々とした声が船…

人生15年遅れな自己紹介

目が醒めたときには、人生15年遅れだった。 28歳、無職。新卒でIT企業のシステムエンジニアになるも、どのプロジェクトでも苦しくなって会社に行けなくなる(行かないことを選ぶ)を繰り返し、紆余曲折を経て昨年退職。 心機一転し「ワニマガジンのエロ漫…